フェルクリンゲンの製鉄所

フェルクリンゲン製鉄所は1873年に建設され、1879年に操業を開始した。近隣地域から豊かな石炭と鉄鉱石を産出し、さらに原料や生産物を運搬するための鉄道の設置が容易であったという立地条件のよさが、フェルクリンゲン製鉄所をヨーロッパでも有数の製鉄所へと導いたのである。まさに時代は、20世紀初頭における世界経済大発展期であった。

その後、経営母体は何度も変わったが、独自の技術開発に力を注ぎ、第1次、第2次世界大戦中も稼動をつづけ、ドイツ軍兵士がかぶっていた鉄兜のほとんどをここで生産するなど、まさにドイツにおける製鉄の1大中心であった。

しかし、1970年代に入って、ヨーロッパ全体が製鉄不況になると、ここもまた例外ではなく、経営危機に陥り、1986年に操業を停止することとなった。

その外観はまさに鉄のオブジェそのものであるが、現在は文化活動拠点として広く利用されている。

私感:世界遺産には本当にさまざまなものがあるが、製鉄所が指定されたものは、こことスウェーデンのエンゲルスベリ製鉄所しかない。しかもここは指定される8年前まで実際に稼動していたのだ。外観はまさに鉄の塊で、賛否両論あるかと思うが、「人類が残す遺産」という意味では価値があるのではないだろうか。ドイツの工業力の1証人であろう。

行き方:ザーリュブリュッケンから鉄道で10分。駅を出たら、左に歩くと、遺産事務所(?)がある。ここでツアーの申し込みをする。

 

 

フェルクリンゲン駅から見た製鉄所全景。この鉄道を利用して、鉄鉱石や石炭が製鉄所に運ばれ、また製品が搬出されていった。

製鉄所内部。なにしろでかい!

 

 

溶鉱炉。手前に見えているのは原料を運び上げるためのコンベア−。 ガイドツアーで内部を説明してくれたおじさん。なんとここで実際に働いていた退職者のかたのボランティアだった。ドイツ語がかなり独特で、30%くらいしかわからなかったけど、働いていたころの話を交えて話してくださって、とてもおもしろかった。