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フィンランドは森と湖の国だ。ちょっと町を出るとすぐに、潅木の林がまわりをとりかこみ、静かな湖の水面があらわれる。
ヴェルラの板紙工場は、まさにそんな風景のなかに存在する。 19世紀、フィンランドは森林資源を利用した製紙工業が盛んだったが、ここヴェルラで製紙工場が操業をはじめたのは1872年のことである。ここはその時代の工場で、現存する唯一のものだそうだ。 何度か火災に会いながらも再建され、現在の美しいネオゴシック様式のれんがの建物ができたのは、1892年のことである。 工場内部は操業していた当時のままに保存されており、その状態たるや、今にもまた、朝のチャイムとともに、動き始めるのではないか?と思わせるほどである。 紙の厚さをチェックしていたマリアさんが、ずっと立って仕事をしていた場所の床が磨耗して、足跡が残っているのが印象深かった。彼女は最後のころ、目がほとんど見えなかったにもかかわらず、長年培った指先の感覚で、紙の厚さを瞬時にしてわかっていたというからびっくりである。 人間がなす工業というものでありながら、まわりの自然風景としっくりとマッチしたヴェルラの工場に、北欧の人々の人生そのものへの哲学を見るような気がした。 行き方:最寄はクオボラという町。バス+徒歩3Kmでも行けるが、帰りのバスがなかったので、しかたなくレンタカーを借りた。車ではクオボラから30分くらい。 |
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工場外観。赤レンガが美しく、とても工場とは思えない。 |
紙を薄く延ばす機械。今にも動き出しそう。 |
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紙の重さを量って選別する。この横がマリアさんの定位置だった。 |
工場外観2。天気がいいなあ… |
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